Home 活動レポート 【第43回月例会レポート】メドピア株式会社 取締役会長・石見 陽氏「医師としての現場感を持ちながら、テクノロジーで医療を変える」

【第43回月例会レポート】メドピア株式会社 取締役会長・石見 陽氏「医師としての現場感を持ちながら、テクノロジーで医療を変える」

――「成長」と「挑戦」をテーマに、経営者たちの熱量が交差

10月某日、千葉イノベーションベース(CIB)の第4期月例会が開催されました。
今期のテーマは「視座を上げる」。経営者たちが互いに学び合い、成長を共有する時間として、各理事からの活動報告、グロースビジョンピッチ、そして注目の講演と続く充実のプログラムとなりました。


■ 会長あいさつ:「成長」をキーワードに掲げて

冒頭では、CIB第4期会長のひろちゃんよりあいさつがありました。
「今期は“成長”をテーマに掲げています。上場を果たしたメンバーも増え、経験の共有と学びの循環を通じて、組織としての成熟を加速させたい」と語り、3月開催予定の**CIBアワード(成長率や挑戦を称える表彰制度)**への構想も発表。
千葉銀行との連携強化や、ペリエホールでのカンファレンス共催に向けた期待も語られました。


■ 各理事からの活動報告

続いて、各理事より活動報告が行われました。

  • 月例会理事・まっちゃん
     今後のスケジュールやフォーラム研修の日程を共有。12月には正会員限定の「ミートアップ兼忘年会」を予定しており、次期カンファレンスに向けた準備も進行中です。
  • フォーラム理事・いっしー
     11月19日に実施予定の「フォーラム研修」について説明。CIBに新たに加入する会員も、今後は必ずこの研修を受けてフォーラムに参加する仕組みになるとのこと。学びを通じた“成長へのコミット”を強調しました。
  • 広報理事・けんちゃん
     広報戦略のピボットを発表。行政中心の広報から、千葉銀行・ちばぎん商店・千葉テレビなど地元企業との連携強化へ舵を切ったと報告。さらに、北海道津別町からの来賓・加藤氏を紹介し、「地方と都市をつなぐCIBのネットワークを広げていく」と語りました。
  • エントリーマネジメント理事・たけちゃん
     新規会員の審査・面談方針を共有。「量より質を重視したメンバー選定を進めたい」とコメント。新たに**平嶋さん(ひらし)**の加入も発表されました。

■ グロースビジョンピッチ:成長戦略のリアル

恒例の「グロースビジョンピッチ」では、2名の会員が自社のビジョンを熱く語りました。

▶ くにさん(ディープテック支援・投資家)

銀行・証券・ベンチャー投資を経て、ディープテック領域での事業支援を展開。
アカデミアとビジネスをつなぐ役割を自任し、「テクノロジーと社会の接点を見極め、企業成長の“シナリオ設計”を科学的に支援する」と語りました。
AIとデータ分析を活用した企業の成長ストーリーモデリングや、上場企業のIR支援など、具体的な実践事例も披露され、参加者の関心を集めました。

▶ ホズさん(株式会社リモ・代表取締役)

テーマは「ヒューマンパワー×テクノロジーで営業組織を変える」。
営業支援事業と営業AIエージェント開発を手がけ、スタートアップから上場企業まで30社超を支援。
リアルタイムで商談を解析・提案するAIツール「セールスエアアシスタント」を紹介し、「人が持つ創造力とAIの拡張性を掛け合わせることで、企業の活力を高めたい」と力強く締めくくりました。

■ 特別講演:メドピア株式会社 取締役会長・石見 陽氏

■ 医師から起業家へ――医療への“違和感”が原点

石見氏は千葉県佐倉市出身。成田高校を経て医師となり、循環器内科で臨床に携わる中で、「医療現場の不信感」という課題に直面しました。
2000年代初頭、医療訴訟の増加に象徴される“医療不信の時代”。患者と医師の信頼関係が崩れつつある現場で、石見氏は違和感を抱きます。

「命を預ける現場で、医師が信用されない。この不毛な構造を変えなければと思った」

その思いから2004年、医師同士が知見を共有し合うプラットフォームとしてメドピア株式会社を創業。
「医師の経験知を社会の資産にする」ことを掲げ、オンライン上で医師の声を集め、製薬企業に情報提供する新しいビジネスモデルを築きました。

■ 上場、そして急成長の裏で見えた“組織の歪み”

2014年に東証マザーズ上場を果たしたメドピアは、医療データの信頼性と専門性を武器に急成長。
登録医師は国内33万人中18万人超に達し、M3(エムスリー)と並ぶ業界の有力企業へと進化しました。

しかし、上場後の拡大フェーズで見えてきたのは、急成長ゆえの組織の歪みでした。
コロナ禍の追い風で株価は急騰しましたが、その反動として「疲弊」と「分断」が組織に生じたと石見氏は振り返ります。

「売上は伸びた。だが、戦える組織ではなくなっていた」

事業を広げすぎた結果、方向性を見失いかけた同社。
その後、不要な事業を手放し、“医療 DX”と“製薬マーケティング支援”の 2 本に再集中する 「外科手術」に踏み切ります。

■ MBOという決断――「もう一度、戦える集団へ」

2025 年、石見氏は大きな決断を下します。

それが、経営陣による自社買収(MBO)。
「株価を上げることではなく、会社を再び立て直すことを優先したい 」

その思いから、外部ファンドを入れない“純粋 MBO”という選択をとりました。
「株価は打ち上げ花火のようなもの。 本質的な価値は、現場の信頼と組織の力にしか宿らない」

一時は時価総額1800億円を超えたメドピア。
しかし、外部環境や市場変動で株価が下落した後も、「医師ネットワーク」という無形資産を信じ、再成長を自らの手で描く道を選んだのです。

■ 医師起業家という新しいキャリア

講演では、「医師が起業する」ことへの社会的偏見にも言及しました。

「かつては『医者が金儲けか』と言われた。でも、今は東大理Ⅲの先生が起業する時代。
医療と経営の融合が、社会を変える力になる」

医師としての使命と、経営者としての責任。
その両立を目指した20年の軌跡に、聴講者の多くが強く頷きました

■ 医療×AIの未来へ――生成AIが変える医療情報の在り方

質疑応答では、生成AI(LLM)の医療分野への影響についても議論が交わされました。
石見氏は「医師の情報検索・判断がAIで変わる時代に入った」とし、すでに米国では医師の4割がAIプラットフォームを活用していると紹介。

「日本でも“集合知×AI”による新しい価値を作らなければならない」

と述べ、医師同士のナレッジ共有にAIを融合させる構想を示しました


■ 懇親会:新たなつながりが生まれる場に

講演後の懇親会では、会員同士の名刺交換や近況報告が活発に行われました。
千葉銀行・京葉銀行・北海道津別町など多方面からの参加者も交え、ビジネスだけでなく地域連携・地方創生に関する新しい議論も広がりました。